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縄文時代の暮らしー土偶について

小学校5年生のあさみちゃんは好奇心旺盛な元気な女の子。学校の担任で今は学習塾の先生をしている神山久美先生のところに今日も遊びに来ました。

あさみちゃん「先生、これ綺麗でしょ」

久美先生「あら、かわいい。学問のお守りね。どうしたの?」

あさみちゃん「いとこのお兄さんが今度中学受験だから、一緒に神社にお参りに行って買ってもらったの」

久美先生「そうかあ、受かるといいわね」

あさみちゃん「でもさあ先生、今は科学万能の時代でしょ。お守りって本当に効くのかなあ」
       
久美先生「お願いしますって、一生懸命祈ったら通じるんじゃない」

あさみちゃん「つまり“思い”っていうこと?」

久美先生「そう、人の“思い”」

あさみちゃん「ねえ先生、縄文時代にもお守りってあったの?」

久美先生「お守りとして使われたのではないかって考えられているものはあるわよ」

あさみちゃん「どんな“思い”だったんだろうね、今と同じだったのかなあ」

久美先生「じゃあ、今回は縄文時代の人々がどのような“思い”で暮らしていたか見てみましょうか」

あさみちゃん「はい、見てみましょう!」


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久美先生「あさみちゃん、土偶って知ってる?」

あさみちゃん「あ、知ってるよ、ゴーグル付けた宇宙人みたいなのだよね」
 
久美先生「それは遮光器土偶。青森県のつがる市の『亀ヶ岡石器時代遺跡』、晩期の集落遺跡で発見されたものね」

    「土偶は早くから作られたんだけど、日本で最も古いのは三重県松阪市の『粥見井尻遺跡』のもの、2点」
     
    「草創期というから、今から1万2000年~1万1000年も前よ」

    「小型(6,8センチ)で少し厚みがあって(2.6㎝)板状、頭と両腕は突起で表現しているけど顔は描かれていなくて、それでも乳房が大きく出ているので女性だとわかるのだけど」

あさみちゃん「ずいぶんと簡単にできているんだね」

久美先生「そうね、滋賀県の東近江市でも同じ時期のものが出土しているから、土偶の最初はまずは中部地方っていうことになるかな。早期前半になると関東地方東部に腰がすごくくびれているようなものが出現、早期後半には東海地方と広がっていくの」

    「これらの土偶は平面的で板状土偶というんだけれど中期以降はとにかく東日本を中心に多く出土しています」
    
    「あの『三内丸山遺跡』ではたくさんの板状土偶が発見されていて、大きなものは32.5㎝から小さなものは3.8㎝のものまで、バリエーションに富んでいて、両手を広げた形なので十字形板状土偶と呼ばれているわ」

    「最初描かれていなかった顔も、前期から中期へと、次第に描かれ表情豊かになっていっていくのよ」

あさみちゃん「土偶って女の人ばっかり?」

久美先生「身体的特徴を誇張しているものがよく知られていて妊娠しているものや、中には子供を抱いているものもあって、女性が多いわね」」

    「健康な子供がたくさん生まれますようにとか、たくさんの実りをおねがいしますとか、多産・豊穣を願うと考えられているの」
    
    「でも男の人の土偶もあって、数では少ないみたいだけど」

    「中期の初頭になると手足とか頭の部分がはっきりしてきて次第に立体的になります」

    「立像土偶といって長野県の『棚畑遺跡』出土の“縄文のビーナス”と呼ばれるものが到達点といわれているわ」

あさみちゃん「“縄文のびーなす”?」

久美先生「そう、帽子のようなものをかぶっていて目は釣り目、鼻も口もしっかりあって、すごくお尻とおなかがが強調されているので“妊婦”を表していると考えられているの」

    「“縄文にビーナス”が出たなら“縄文の女神”も出ないわけにはいかないわね」

あさみちゃん「今度は“縄文のめがみ”?」

久美先生「縄文中期の遺跡で、山形県の『西の前遺跡』出土。ずんぐりしたこれまでの土偶に対してこちらはなんと八頭身の美人」

    「“縄文のビーナス”に似たような帽子を小さな頭にかぶり、直線的だけど腰がくびれていて足が長いの。大きさは最大級の45㎝というから、三内丸山のものよりも10㎝以上大きいわね」

    「その後、後期には顔がハート形の土偶が現れて、後期から晩期にかけては顔が山形(三角形)をしている山形土偶やみみずく土偶なども出てくるの」

あさみちゃん「“ミミズク”って鳥のミミズク?」

久美先生「そうなの。関東地方の遺跡からよく出土されているのだけど、顔はハート形で大きな目が鳥のミミズクに似ているのでそう呼ばれているそうよ」

    「櫛や髪型を表しているといわれるいくつかの突起の出た頭もユーモラスで特徴的」

    「そして、とくに有名なのがあさみちゃんも知っている青森県つがる市『亀ヶ岡遺跡』の遮光器土偶」

あさみちゃん「出たあ~」

久美先生「他にも仮面をかぶった土偶など、それぞれの地域で大量の土偶が作られていったの」

    「全国で15000体から18000体が出土しているのだけど、実際には縄文時代で3千万個くらい作られたのではないかと推定している研究者もいます」

    「範囲は北は北海道から南は沖縄を除いた九州地方までというから広いわね」

    「でも不思議に量的には関東地方・東北地方の東日本が多くて、千葉県の『吉見台遺跡』からはなんと600個以上も出土しているそうよ」

    「西日本での土偶の出土はまれで、九州を除いては人型土偶は珍しいんですって」

    「東北地方では弥生前期まで盛んに作られるんだけどその後衰退、その他の地域では弥生時代に入るとほとんど作られなくなるの」

あさみちゃん「それらがみんなお守りなの?」

久美先生「魔除けであるとか護符とか。小さなものは個人のお守りじゃないかと考えられているのね。でも、大きなものはその集落全体とか、複数の人々を対象とした祭祀的ものと推定できそう」

    「問題はね、その出土の仕方なの。“縄文のビーナス”は中央広場の小さな穴(土坑)の中から横たわるように完全な形で発見されたんだけど、他の土偶はだいたい破壊された形で見つかっているのよね」

あさみちゃん「破壊って?」

久美先生「手足がばらばらになっていたりするものもあるから、身体の悪いところを破壊することでその回復を祈ったと推測されているのよ」

あさみちゃん「へえ~、なんか今と違う」

久美先生「そうねえ、そしてそれが発見された場所なんだけど」

    「盛土遺構といって、住居を作った時の土だとかをわざと一か所に集めて、三内丸山なんかでは1000年の間に2mとか2.5mにまでに、丘のようになっているところがあるのね」

    「その中には土だけじゃなく大量の土器や石器が埋まっていたので、最初ゴミ捨て場かと思われたのだけど、ヒスイや土偶も入っていたので、状況が一変」

あさみちゃん「ヒスイって高価なんでしょ。ゴミ捨て場にそんなもの捨てないよね」

久美先生「そう、だからね、そこでお祭りをしたのではないかという推理が生まれるわけ」

あさみちゃん「何のために?だんだんわからなくなってきた~」

久美先生「もうちょっとだから頑張って!」

    「あのね、使われなくなったものに対しても昔の人はそれらを捨て去ってしまうのではなく、“再生”を願っていたのではないかと考えられるのね」

    「古代の人々は太陽や海や川、森に対して自分たちの命を育んでくれるとっても大切なものとして敬っていました」

    「それは日本だけでなく世界の各地にみられる信仰なんだけど、縄文時代の人々って、自分たちが作った“もの”に対してもとっても深い“思い”を抱いていたんじゃないかな」

あさみちゃん「わかった、心を込めて作ったし、心を込めて大切に使ったということだよね」

久美先生「そう、だからそういうものには難しい言葉でいうと“霊”が宿っていると考えていた。そこで、定期的に感謝とか再生を願ってお祭りをしたと思うのね」

あさみちゃん「気持ちの優しい人たちだったんだね」

久美先生「そうねえ」

久美先生「ところで、あさみちゃん、遮光器土偶なんだけど東北地方で盛んに作られるのね」

あさみちゃん「流行ったんだあ~。なんかインパクト強いもんねえ~」

久美先生「それぞれの地域で作られる土偶だけど、遮光器土偶は北海道南部から関東地方・中部地方、それに近畿地方まで出土例があるの」

あさみちゃん「同じようなものを真似して作られたってこと?」

久美先生「西の端はなんと兵庫県神戸市の『神戸篠原遺跡』から発見」

    「真似して作ったというよりも、どうももたらされたという方が当たっているみたい。つまり東日本との交流の結果、そこにあるということ」

あさみちゃん「他からもたらされたって、サヌカイトや黒曜石、ヒスイなんかがそうだったよね。遮光器土偶もそうやって来たってことか」

      「でもそういうものって日本海側じゃなかったっけ?」 

久美先生「そうなの,神戸は瀬戸内側だよね。それに『神戸篠原遺跡』って六甲山南麓の扇状地に位置しているんですって。なんだか縄文の人々のバイタリティのようなものを感じるわね」

あさみちゃん「それと、遮光器土偶への“思い”でしょ」

久美先生「そう、そういうこと」

あさみちゃん「はるばるやってきた遮光器土偶はどこで見られるの?」

久美先生「“神戸市文化財センター”で見られるわよ」

    「三宮駅からは市営地下鉄で西神中央駅まで、明石駅からは神戸市営バスか神姫バスに乗って、西明石駅からは神姫バスに乗って西神中央駅まで、西神中央駅からは歩いて8分」

    「他にもたくさん展示物があるからしっかり見てきてね」

あさみちゃん「は~い」


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